川井雄仁がイタリア・ヴェネツィアのパラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナにて開催されるグループ展「⾝体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ」に参加

2026年02月15日

川井雄仁は2026年5月9日(土)から11月22日(日)にかけてイタリア・ヴェネツィアのパラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナで開催されるグループ展「⾝体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ」に参加します。第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展にあわせた、GO FOR KOGEI アーティスティックディレクター・秋元雄史のキュレーションによるグループ展です。 

 

本展は、情報と消費が加速し続ける現代において、「つくること」に宿るもう一つの時間感覚と身体的知覚の回復を目指す展覧会です。ここでいう「エスノグラフィー(民族誌)」とは、素材に向き合い、手を動かし、時間をかけてかたちを生み出す作家たちの実践を、文化的・社会的な記述として読み解く態度を意味します。 

私たちの生活は、即時性や効率が重視される環境にあり、「すぐにわかるもの」「すぐに使えるもの」が価値とされる一方で、感覚や記憶の奥行きを育む「遅さ」や「沈黙」が見失われつつあります。本展に参加する作家たちは、火や水、土、繊維、漆、ガラスといった異なる素材と身体を媒介に、そうした加速社会の外縁で営まれる「感覚のフィールドワーク」を提示します。 

磁器の偶発性を刻む桑田卓郎、土と重力の間に呼吸を刻む川井雄仁、都市とサブカルを身体的に編み直すコムロタカヒロ。絵付けや刺繍、繊維や漆といった手作業を通じて、記憶と感情の層を編む牟田陽日、沖潤子、綿結、中田真裕。そしてガラスという透明な物質に、時間のプロセスを封じ込める三嶋りつ惠や消費の記憶を刻むシゲ・フジシロ。さらに舘鼻則孝は、伝統的装飾文化と都市的感覚を往還しながら、身体と装いにまつわる時間と儀礼の層を再構成しています。 

彼らの作品は、「すぐに意味がわかるもの」ではなく、時間をかけて向き合い、触覚的に関係を築くことを鑑賞者に促します。本展は、こうした制作と鑑賞のプロセスそのものを、加速社会に対する静かな抵抗の形式としてとらえます。それは、感覚の再構築であり、世界との再接続の試みであります。身体と物質の交差点で編まれるこの小さな民族誌は、忘れられた感受性の地層を掘り起こし、現代における「つくること」の新たな意味を浮かび上がらせるでしょう。 

 

川井は、陶を単なる素材としてではなく、欲望や虚構、アイデンティティの揺らぎを投影する媒体として用い、過剰な色彩と量感を伴う造形を展開してきました。その背景には、1990年代の原宿文化やストリートファッション、マスメディアが生み出したイメージへの強い影響があります。消費的で甘美な表層と、現実との乖離が生む違和感や不安定さが、川井の作品には常に併存しています。 

本展では、装飾的な内装をもつ部屋が連なるパラッツォの中にあって、あえて倉庫として使用されていた簡素な室内空間を展示場所として用います。華やかな装飾を欠いた空間において、川井の作品は、重厚な壁や床と直接対峙しながら配置されます。液体を滴らせる陶磁作品は、固体であるはずの陶に流動性と湿度を与え、欲望が滲み出し、循環するプロセスを可視化するでしょう。装飾性を抑えた空間だからこそ、作品の過剰な色彩や質量感は強調され、鑑賞者は甘美さと不穏さのあいだを往還することになります。 

 

【開催概要】
展覧会名: ⾝体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ
会場: パラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナ
会期: 2026年5月9日(土)– 11月22日(日)
開館時間: 11:00 – 19:00(5月9日 – 9月30日)
      10:00 – 18:00(10月1日 – 11月22日)
休館日: 火曜日
Webサイト: https://venice.goforkogei.com/jp/
主催: 認定NPO法⼈趣都⾦澤
助成: クリエイター⽀援基⾦
キュレーター: 秋元雄史 

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