Reflections of Spaces - Spaces of Reflection 空間への反射 - 反射の空間

2023年10月14日(土)- 12月23日(土)

KOTARO NUKAGA(六本木)

KOTARO NUKAGA(六本木)では、10月14日(土)から12月23日(土)まで、ドイツ出身で現在もケルンを拠点に活動する写真家カンディダ・ヘーファー(Candida Höfer)の個展「Reflections of Spaces – Spaces of Reflection 空間への反射 – 反射の空間」を開催いたします。本展覧会は、ヘーファーにとってKOTARO NUKAGAでの初の個展となり、彼女の象徴的な「Library」シリーズを中心に据え、「場所」の概念を通じて空間における力学を露わにし、その反映による新鮮なリアリズムの視点を提示します。

ヘーファーは1973年から1982年の間、ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミー(Düsseldorf Kunstakademie)にて、オーレ・ジョン(Ole John)の映画クラスでの3年間を経て、ベルント・ベッヒャー(Bernd Becher)のクラスで写真を学びました。当時、そのクラスにはトーマス・シュトルート(Thomas Struth)、アンドレアス・グルスキー(Andreas Gursky)、トーマス・ルフ(Thomas Ruff)らも在籍し、各々がその後、現代アートにおける写真表現をリードし、美術史および写真史に残る作品を多く生み出しました。ヘーファーの作品は「場所」の概念に焦点を当てています。文化人類学の領域で常に探求が行われてきたその概念は単なる物理的空間以上のものとされ、文化、歴史、社会的関係によって意味を持ち、人々のアイデンティティに影響を与え、社会的・政治的権力の構造にも組み込まれているとされます。

ヘーファーは半世紀にわたる長いキャリアの中で、ヨーロッパとアメリカのあらゆる種類の重要なインテリア(室内空間)を文化的な場所として撮影してきました。たとえば、本展のメインヴィジュアルとして提示されている《Herzogin Anna Amalia Bibliothek Weimar VI 2004》は、侯爵夫人アンナ・アマリアによって1766年、ドイツ、ワイマールに建築された歴史図書館内のロココホールがモチーフとなっています。このロココホールを備えた歴史図書館は、ドイツ古典主義の重要な場所として知られ、1998年にはユネスコの世界遺産に指定されました。ドイツの詩人、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)が働いていた場所としてもよく知られており、18世紀の優美で装飾的なロココ様式でデザインされ、彫像や肖像画が至る所に飾られているこのホールは、建物を命じた人物、アンナ・アマリアの当時の権力を示しています。また、建築当初から図書館として設計されていたことは、備え付けの本棚などからも明らかです。細部まで注意深く観察することで、2階から突き出た右側の照明には、照明器具から天井に向けて配線コードが1本、正面やや左側の2階からは本棚の脇の柱にも電気を供給するための配線が1本引かれていることがわかります。ヘーファーはこういったものの写り込みを隠すことはしません。彼女はこの場所を単に歴史的な場所として提示するのではなく、現代においても文化的な「場所」として、その歴史的な合成を示す多様な要素への視点を提供しているのです。

 

Herzogin Anna Amalia Bibliothek Weimar VI 2004

通常の視覚とは異なる視点をとり、空間内の光を厳密にコントロールすることで、美しく演出されたインテリアのイメージは、鑑賞者と心理的距離をとり、彼らを空間の外側に置きます。美術評論家のマイケル・フリード(Michael Fried)がカンディダの作品について、

Notions such as detached tranquility and ethereal quietude are related to the effect of distance, another characteristic of her art, as we have seen. And beyond all these qualities is the overriding question of the viewer’s relation to the photographic image, by which I mean the question as to what extent and in what sense the viewer is either invited to “enter” the depicted room or prevented from doing so in spite of the clarity of the mise-en-scène .
離れている静けさや幽玄な静寂といった概念は、彼女の芸術の特徴である距離の効果に関連している。つまり、ミザンセーヌ(舞台演出)が明瞭であるにもかかわらず、鑑賞者はどの程度、どのような意味で、描かれた部屋に「入り込む」よう誘われるのか、あるいは「入り込む」ことを妨げられるのかという問題である。

と述べたように、鑑賞者はその空間に対し、外からの視点によって空間全体をオブジェとして捉えることとなり、空間そのものとの対話へと誘われることになるのです。ヘーファーのイメージは、視覚的な情報だけでなく、複雑で多層的な対話を引き起こし、空間との対話、つまり、空間に対する思考のリフレクションを通じて、その場所が「文化的な場所」としての性格をいかに形成してきたかについて深い洞察を提供します。政治的権力、宗教的権力、知識や芸術など、近代以降に積み上げられた文化と歴史と私たちとの関係が、思考のリフレクションを生み出し、その場所に関与するあらゆる要素を明らかにしていくのです。

Michael Fried WHY PHOTOGRAPHY MATTERS AS ART AS NEVER BEFORE, YALE UNIVERSITY PRESS , 2008, p. 286

開催概要
Reflections of Spaces - Spaces of Reflection 空間への反射 - 反射の空間

アーティスト

カンディダ・へーファー

会期

【開催概要】 会期: 2023年10月14日(土) - 12月23日(土) 開廊時間: 11:00 – 18:00 (火-土) ※日月祝休廊

会場

PRESS RELEASE