After Dark

森本 啓太

2021年11月20日(土) - 2022年1月29日(土) ※会期を延長しました

KOTARO NUKAGA(天王洲)

KOTARO NUKAGA(天王洲)では、2021年11月20日(土)から2022年1月29日(土)まで、森本啓太による個展「After Dark」を開催します。15年にわたり滞在し、制作活動の拠点を置いていたカナダから今年帰国したばかりの森本にとって、母国で初開催となる本展では、新作のペインティング21点を展示いたします。

森本啓太は16歳でカナダに移住し、その地で初めて絵画制作について学びました。なかでも古典絵画の技法や構図に関心を持ち、バロック期の絵画ように完璧にコントロールされた光の表現と、現代社会における日常的な風景をモチーフとして折衷的に組み合わせることにより、独自のリアリズムの地平を切り開きます。特別ではないありきたりな風景の中に美しさや神秘性を生み出し、誰でもない誰かが主人公になる独自のナラティブを生成するその手法は、エドワード・ホッパーやピーター・ドイグなどに代表される「マジックリアリズム」の系譜に位置づけられつつも、現代社会を見つめる冷静な眼差しによって鑑賞者に新鮮な視座をもたらします。

本展で展示されるシリーズにおいて森本は、レンブラントをはじめ美術史の中でも人々を魅了し、神秘的、宗教的に扱われてきた「光」というモチーフを自然的や神聖な現象だけでなく、現代の消費社会の中で人々を惹きつける自動販売機やファーストフード店、駐車場の電飾サインなどにまで拡張し、21世紀の日常的な経験を描き出しています。また、森本は描き出す夜の風景を意図的に特別な場所として特定しうるアイコニックなシンボルから遠ざけます。明るすぎる現代の東京から見過ごされてしまう街の片隅、利用者の少ないローカルな電車の駅、どこかのように見えてもどこであるか思い出せない丘の上、それら特別でない場所にある光をコントロールし、誰とも言えない人物を登場させます。森本は日常生活における通過地点、つまり、アノニマスな場所に光をあて、その闇と光のコントラストによって、一時的に私たちが現実世界から逸脱し、逃げ込める場所「ヘテロトピア」を描き出しているのです。鑑賞者である私たちは森本が作り出したこの、どこかで見た風景のようではあるがどこでもないこの場所、つまり「ヘテロトピア」へと誘われるのです。

Bathing Light
Bathing Light
Last Train

20世紀のフランスの思想家、ミッシェル・フーコーが唱えた概念であるこの「ヘテロトピア」とは「ヘテロ=ちがう」と「トピア(トポス)=場所」からなる概念で、「他なる場所」を意味します。フーコーは「生きづらさ」やそれを生み出す権力などについて考え続けた哲学者でした。「ユートピア」が神話的で架空の場所から現実に異議申し立てをするために構想されることに対し、「ヘテロトピア」は、現実に存在するが、他のすべての場所に対して絶対的に他なる場所であり、それらすべての場所を内側から無効化してしまうような「反-場所」であるとフーコーは考えました。つまり、生き苦しさを生み出す現実に対して異議申し立てをし、それに抵抗するためには、架空の世界ではなく、現実世界のその内部に「ヘテロトピア」を構築し、そこにそれとは全く別の現実世界を作り出すことが必要だとしたのです。

「現代社会において、多くの人が生き苦しさを抱えている」と、森本は言います。特にそれは相互監視の社会システムが作られ続けている現代において、私たち自身が無意識のうちに自分自身の外側に規定される価値観に対し、自身の意識を向け過ぎていることで生まれているのではないかと森本は考えています。森本は絵画を描くことで、そういった現代社会の抱えるある種の「生きづらさ」から軽やかに逸脱をしてみせているのです。

私たちはどんなに何かを奪われたとしても、何気ない日常を特別なものにするという「自由」、つまり、自分自身のあり方を決める「自由」は奪われることはないのだということを森本の作品は示唆しています。日常のあらゆる場所に「ヘテロトピア」を出現させること、そこで独自の物語を紡ぐこと、それら日常に彩りをあたえることのすべては、その世界とどう向き合い触れるのかという私たちの選択に委ねられているのです。

VR
開催概要
After Dark

アーティスト

会期

2021年11月20日(土) - 2022年1月29日(土) ※会期を延長しました 11:00~18:00 (火-土) ※日月祝休廊 ※開廊時間、入場制限等については随時変更させて頂く可能性があります。 ※感染症拡大防止のため、会場の混雑状況により入場を制限させていただく場合がございます。ご理解・ご協力のほど、何卒よろしくお願いいたします。

会場

ご来廊の際のお願い

なお、展覧会を安全にご覧いただくために、ギャラリーでは下記の対感染防止対策を行なっております。 皆様のご理解・ご協力をお願い申し上げます。 【ご来廊の際のお願い】 必ずマスク着用の上、入口で手指の消毒をお願いいたします。 また、以下の症状をお感じの方は、ご来廊をお控えください。 ・風邪の症状がある ・37.1度以上の熱がある ・倦怠感(強いだるさ)、息苦しさ等がある 【ギャラリー側の対応】 ・手指消毒液の設置 ・ドアノブ、エレベーターボタン等の随時消毒 ・ギャラリー内の換気・混雑時の入場制限 ・スタッフのマスク着用、手指消毒、検温

PRESS RELEASE